REPORT
レポート
2019.05.25
“感じたまま”を引き出して書く こども作文教室「コトバのチカラ」

 

小学校の頃に作文が苦手だったという人は多いと思います。得意だったという人もいると思いますが、少なくとも私は苦手でした。

 

そんな私たちに、作文教室「コトバのチカラ」を主宰する坂本恵利子さんはこう言います。

 

「作文の書き方をちゃんと習っている人は少ない。だから書けないから苦手、なんて思う必要はないんです」

 

昔の自分に教えてあげたくなりそうな、作文教室の秘密を教えてもらいました。

 

 

子どものための作文教室

 

「コトバのチカラ」は尼崎と伊丹で開かれていて、「レギュラークラス」「体験型クラス」「発話型クラス」の三種類のクラスがあります。

レギュラークラスの授業風景

 

レギュラークラスは通常の授業で、読み書きできる幼稚園児から中学生までで年齢ごとに三つに分かれています。体験型クラスは講師を招いて体験授業をした後にそのことを作文に書いてもらう授業。 発話型クラスは「書く」ことと「発表する」ことを学ぶ教室。ラジオ番組を作ってみたり、インタビューをしてみたり、「伝える」ことにも重点を置いています。

 

ライターとしても活動している坂本さん。作文教室を始めることになったきっかけは、坂本さんの長女が小学校3年生の時に書いた作文を読んだ時でした。文法の間違いがあったり、まとまりがなく伝わりにくい文章を書いている事に気づき不安を感じたそうです。そこで、自ら教え方を勉強しながら娘さんを教えるようになりました。

 

知り合いの子どもたちも一緒にボランティアで教えるようになると、みんなが喜んでくれて「作文教室ってちょっと面白いかも」と思い始めました。でもその頃はまだ「ボランティアやったらいいなくらいの感じ 」に留まっていました。

 

 

その気持ちが大きく変わったのが、尼崎のソーシャルビジネスプランコンペとの出会い。そのキックオフイベントで市役所の係長さんに「出てみたらどうですか?作文教室いいですよね」と褒められて参加を決意。様々な人に相談に乗ってもらい、最終プレゼンまで進むことができました。その中で「このきっかけで教室を開かないともう一生作らないな」と思うようになった坂本さんは、コンペが終わったある日に「3か月後の開講」を宣言します。

 

そして2015年2月、娘さんと数人の子どもたちを教える作文教室が始まりました。

 

 

ライターだからできること

 

一年目が終わる頃の悩みは、「作文が嫌いな子どもが来ない」ことでした。「コトバのチカラ」のコンセプトは「キライからフツウ」。「作文が嫌いな子どもに作文がかけるようになってほしい」という思いが込められています。だから作文が嫌いな子どもにも来てもらいたかった。そこで坂本さんが始めたのが「体験型レッスン」でした。

 

例えば、カエルの実物と絵を見せながら物語を創ったり、乾燥剤と電子レンジを利用して一日で押し花のしおりを作ったり。

 

楽しい体験の後、子どもたちが感じたことを坂本さんが聞きだします。その後子どもたちが話した言葉を書き出し、書きたいことを選ぶことで作文嫌いの子どもたちでも作文が書けてしまうのです。

 

作文を書き始めるまえに思い浮かぶ話題を書き出してから、書く話題を選ぶ「分類地図」。他にも「おもしろかった」を使わないルールにしてみるなど、おもしろい文章を書くための工夫がたくさんあります。

 

 

「聞き出すこと」ことを大切にしているのは、坂本さんがライターであるからこそ。

 

描いてもらった絵を見ながら「これはどういう風に思って描いたの?」「嬉しいってどんな感じ?」と質問を投げかけ、子どもたちの気持ちを丁寧にすくい上げます。

 

一人ひとり丁寧に話を聞くことは、インタビューや取材の時と共通するスタンスです。

 

 

言葉がもつチカラ

 

教室の名前にもなっている「コトバのチカラ」。それはどのようなチカラなのか、坂本さんに尋ねるとこう答えてくれました。

 

それは「生きるチカラ」。

 

「自分の思っているアイディアを言葉にできるとか、自分で考えていることやプレゼンを言葉にできる。自分の気持ちを好きな人に相手に伝えられる。もう国語の偏差値なんて正直どうでもよくって。私自身が言葉を通じて生きる力をもらっているので、子供達にもそれを身につけてもらいたいっていうのはありますね。勉強としてではなく楽しさとして」

 

 

たくさんの子どもたちが学びに来るのは、その気持ちが子どもたちに伝わっているからなのかもしれません。

 

坂本さんに話を聞かせてもらって、作文がただの「学校の勉強」ではないと思える事がとても大事なことだと感じました。楽器の演奏と同じように「自分を表現できる」行為であり、人との関係の中で生きていく助けにもなる。子どもでも大人でも、「作文が嫌い」な人が一人でも少なくなればいいなと心から思います。

 

今まで言葉にしてこなかった気持ちを言葉にすることは、人生をより深く味わえるということだと思います。自分の中で曖昧だった気持ちをじっくり見つめて言葉にしてみる。その気持ちを短い文章にしてみることから本当の作文が書けるのかもしれません。

 

「生きるチカラ」を学べる作文教室。

 

できることなら、私も子どもに戻って学んでみたいと思いました。